WADAX:使用感まとめ・評価

仕事柄、レンタルサーバーを利用することは多く、WADAXも約10年前から利用しているレンタルサーバーの一つです。利用し始めた頃はレンタルサーバーに関する情報も今ほど豊富にない時代で、WADAX自体も有限会社でそれほど知名度も高くありませんでしたが、仲間内では安定性が高く安心してクライアントのWebサイトを収容できるレンタルサーバーとして評価が高く、積極的に利用していたレンタルサーバーの一つでした。
ここではレビューのまとめとしてWADAXを約10年間使い続けた理由、利用者目線でのWADAXの評価・感想、希望したい事などを挙げてみたいと思います。 (以下のレビューは2014年1月時点の内容・使用感に基づきます。)

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プラン・価格帯

2013年夏にプランが新しくなり、最も廉価なプランは月額1,155円(1年契約時)となりました。ずっと(10年前から)最廉価プランの価格が月額1,995円でしたので、このリニューアルはWADAXとしては大きな変化と言えそうです。個人的に月額2千円~という価格はホビーユーザーが手を出しづらいとい点でも良いかなと思ったりしていましたが、ここ10年でビジネス・ホビー問わずもの凄い勢いで低価格化が進みましたのでプランのリニューアルは少し遅いくらいだったのかもしれません。 共用サーバーのプラン構成はブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの4つととてもシンプル。プラン選択で重要となりそうなポイントは3つ。

  • マルチドメインの有無
  • データベースの数
  • メールアカウント数

ちょっとした独自ドメインの商用サイトであれば最廉価プランのブロンズ(マルチドメイン無し、データベース1個)で対応できると思います。注意が必要なのはメールアカウント数です。ブロンズはメールアカウント数が20個となっていますので、例えば社員全員にメールアカウントを発行するというケースでは20個では足りない事も考えられます。その場合はメールアカウント数無制限のシルバー(月額1,890円~)を選択すると良いでしょう。逆にinfo@ドメイン、support@ドメインだけで良いというケースではブロンズで十分かもしれません。 1つの契約で複数の独自ドメインWebサイトを運用しようという場合はマルチドメインに対応しているシルバー以上のプランを選択しましょう。

基本機能

マルチドメインの有無、利用できるアカウント数、データベース数、容量は異なりますが、基本的にブロンズ~プラチナまで機能は同じです。仕様表を見る限り上位プランのみ利用できる機能といったものはありません。最廉価のブロンズでも一通りの機能が利用できるのでこれから新規でサイトを作る場合やサイト規模がはっきりしない場合は取り敢えずブロンズでスタートするというのもアリだと思います。

管理画面/コントロールパネル

2012年夏のリニューアルで見やすく使いやすくなりました。シンプルに機能が分類されているので恐らく迷うことは無いと思います。コントロールパネルはこちらでも一通り紹介していますので参考にしてみてください。

PHP+データベース

PHP、MySQLに加えてPostgreSQLの利用可能。PostgreSQLは対応しているレンタルサーバーも少ないのでこれが決め手となる方も居るかもしれませんね。 それぞれのバージョンは申し込み時期(収容されるサーバ)によって異なるようです。主要CMSやフレームワークの動作で問題になる事は少ないと思いますが、ユーザーが希望するバージョンを選択できる形式にはなっていないので目的のバージョンがある場合は申し込み前に確認しておくと安心です。

.htaccess、cron、SSH

.htaccessとcronはコントロールパネル上から手軽に設定できるようになっています。Basic認証によるアクセス制限などは知識のない方でも簡単に設定できるかと思います。SSH・Telnetに関しては残念ながら利用不可できないようですのでSSHによる操作が必要な方は注意してください。

セキュリティ
標準で共用SSLが利用可能です。独自ドメインによる専用SSLはオプション対応でグローバルサイン、セコムトラストシステムズ、ベリサインが選択できるようになっています。FTPは標準でFTP over SSL(FTPS)が利用可能、メールはPOP before SMTP、POP over SSL、SMTP over SSL、SMTP AUTH、IMAP over SSL、APOPと様々な方式に対応しています。その他、定期セキュリティ診断、不正侵入検知予防、大規模DoS/DDoS攻撃防御、Webウィルスチェック等の対策がなされており共用サーバーである事を考えると高水準といって良いのではないでしょうか。

転送量「無制限」

但し、「あくまでも共用サーバーですので、あまりにも転送量の多い場合は、上位サービスへの移転や分散をお願いする場合がございますので、あらかじめご了承ください。」という記載もあります。 転送量ではありませんが、個人的な経験として負荷が原因で上位プランへの移行を勧められた事があります。当時はブロンズプランで複雑なデータベース処理を行うWebサイトを運用していたのですが、徐々にサイトが人気化しアクセスが集中、結果としてデータベースへの負荷が急激に高まってしまいました。この時は一時的な人気ではなかったのでWADAXのサポートや営業の方と相談して最終的にWADAXの専用サーバーへ移行しました。移行まで猶予を貰い日程も調整できましたのでサイトを止める事なく移行できましたが、大規模サイトを運営する予定の方は頭の片隅に入れておくと良いでしょう。

安定性

高水準と言って良いと思います。但し、個人的には約10年間多少の不具合はあっても致命的な障害に遭遇した事はありませんが、ここ最近の口コミでは繋がりにくい事があったという投稿も見かけるようになりました。HTMLベースの静的サイトが主流であった10年前とは異なり、今日ではシステムを利用した動的サイトが主流となり、多数のWebサイトを収容する共用型レンタルサーバーに昔のような100%に近い安定性を求めるのもは難しいのかもしれません。WADAXでは障害情報を一般公表していますので、心配な方はどの程度の頻度でどの程度の障害が発生しているのかチェックしておくと良いでしょう。

サポート

平日は9時~22時、土日祝日は9時~18時の365日電話サポートがある点はWADAXでもウリにしていますが、実際にここまでの電話サポートはレンタルサーバーの中でも少数派と言えます。普及価格帯のレンタルサーバーでは平日18時まで、土日祝日の電話サポート無しというのが標準的なところではないでしょうか。 不具合や障害は営業時間内に起こるとは限りませんし、職種によっては土日祝日関係ないケースもあります。特にWeb担当者や制作代行担当者など速やかに状況を把握して何らかの報告を挙げる必要があるポジションに居る方にとっては土日祝日問わず電話が繋がるという事は重要になってくるのではないでしょうか。 個人的にもサポートには何度かお世話になっています。メールでの依頼・問い合わせに対しては当日(速い時には1時間程度)、遅くても翌日には返事が来ています。契約内容を伴うような変更依頼は本人確認としてFTPの初期パスワードが必要となる為、専用フォームから入力して依頼を出します。 電話サポートは基本的にサポート担当の方が窓口で対応しますが、細かい技術的な質問などは技術部門に確認して折り返しとなる事もありました。利用した限りでは、ありがちな定型文で問題が解決しないような対応といった事も無くサポートの質は良質な印象を受けました。

専用サーバー

上でも少し触れましたがWADAXでは共用サーバーだけでなく専用サーバーにも触れる機会がありました。専用サーバーにもなるとある程度まとまった金額が動くためか、導入の際や変更の際には営業部の方が親身に対応してくれました。マネージドタイプで数年間の運用でしたが、セキュリティパッチ適用によるリブート以外はダウンする事が全く無く非常に安定した運用を行うことが出来ました。 マネージドタイプの場合は共用サーバーと同様にサーバーの管理はWADAXが行いますが、サーバー自体の仕様は共用サーバーとは全く異なり、ユーザーが操作する管理画面はPLESKとなります。PLESK自体は共用サーバーでも採用例が多いコントロールパネルですので共用サーバー感覚で他者の影響を受けずに高負荷に耐えられるサーバーを探している方には選択肢の一つになるかと思います。

サーバー・プランの乗り換え

長期間利用しているという事もあり、共用サーバー、専用サーバーともに利用開始から数年経ったところでWADAXから新しいサーバーへの乗り換え提案がありました。OS・ミドルウェアのサポート期間が終了するので(そのまま使い続けてもいいですが、)安くて高性能な新プランへ移行してはどうですかといった内容です。 レンタルサーバーとしては一般的な対応だと思いますが、このあたりを意識しないで長期運用できるようになればベストですね。

見積書・領収書

WADAXではビジネス用途を強く意識している事もあり、見積もりの作成は勿論、依頼すれば領収書の発行もOKでした。領収書に関しては当たり前と思われる方も多いと思いますが、レンタルサーバーでは発行してくれないところが多いので経理上必要な方は注意が必要です。WADAXの場合は依頼する事で手書きの領収書が郵送されてきました。 またアカウント情報もメール通知だけでなく、後日郵送で案内が届きますので確認がしやすいと感じました。

解約について

基本的に契約は月末までとなっており、解約したい場合は解約したい月の20日までに解約申請を行う必要があります。具体的な方法としては、サポートに解約したい旨を伝えると解約申込書PDFが貰えます。この解約申込書に署名・捺印してファックスか郵送する事で解約となります。ここでも本人確認としてFTPの初期パスワードが求められますので予め用意しておきましょう。この手続きが面倒だと言う方も居ますが、ビジネス用途がメインである事、第三者による成りすましを避けるという目的においては妥当な手続きかと感じました。

まとめ

前述の通り、個人的には約10年という長期間利用してきましたが、やはりビジネス利用を強く意識したレンタルサーバーだという印象を持ちました。一通りの機能が揃っており、安定性も高水準と言えますので仕事でサーバーを探している方には良い選択肢の一つになる筈です。仕事で利用するを想定した365日電話サポートや事務処理対応も他のレンタルサーバーより優れている点だと思います。 一方で、自由度や手軽さを求めるホビーユーザーにとってはやや高めの価格帯で保守的な内容に感じられるかもしれません。実際、WADAXでは個人に人気のVPS(仮想専用サーバ)タイプのレンタルサーバーも一切扱っていません。
資本・社名が変更となり色々と話題にもなりましたが、今後WADAXがどのような方向に進んでいくのか一利用者として注目していきたいと思います。

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